株式会社杉本カレンダー

ニシワキタダシ 独占インタビュー

ニシワキタダシ氏

思わずクスリとしてしまう言葉と、ゆるくてかわいらしいイラストでユーモアたっぷりに描かれた週めくりの「しりとりのカレンダー」。
2016年から出版し、今年で10年目を迎えます。それを記念し、作者ニシワキタダシさんのロングインタビューをお届けいたします。
「しりとりのカレンダー」はすべて描き下ろし。これまで描かれた、しりとりイラストの総数はなんと計583点にのぼります。 インタビューでは、カレンダーの出版に至った経緯や制作秘話、近年新発売したグッズへのこだわりについてお話を伺いました。

2016 年版から2025 年版のしりとりのカレンダー

2016 年版から2025 年版のしりとりのカレンダー

10年続けて変わったこと・変わらないこと

―まずは「しりとりのカレンダー」10周年ありがとうございます。率直にこの10年間で変化などはありましたか?

なにか変化がというよりは「気づいたら10年経ってた!」みたいな気持ちが大きいですね。最近は制作することがルーティンのような、生活の一部みたいにも感じています。

かんさい絵ことば辞典(2015 年版)

―初年はかんさい絵ことば辞典(2015年版)で、翌年はニシワキさんのご提案で「しりとり」になったんですよね。

そうですね、最初カレンダーのお話をいただいたときはスケジュールの関係もあって、著書本である『かんさい絵ことば辞典』のイラストを使ったカレンダーとなったんですが、翌年は制作期間も長く取りながら、週めくり53週分に合うようなものとして「しりとり」でつながるイラストを提案させていただきました。

―週めくりカレンダーと、「しりとり」という題材はすごくぴったり合っているように思います。

それまでにも「しりとり」を使ってイラストやグッズなどを作っていたこともあったんですが、自分のやりやすいテーマでもあったので、点数のある週めくりカレンダーにも合っていましたね。カレンダーは台紙の色やイラストタッチなど、10年間で少しずつ変化がありながらも並べてみるとシリーズ感があるように感じます。現在開催している展示の中で「しりとりのカレンダー」過去作全てから、ジークレープリントの作品へとオーダーができるようにもしたんですけど、昔の作品を選んでくれている方もいて、昔から見てくれている方かなぁとか、初めて見て昔のタッチも気に入ってくれたのかなぁとか想像したりもしました。

しりとりのカレンダー

―アイデアの出し方や、その内容などに変化はありましたか?

そこまで大きくは変わってないかもしれないですね。でも続けて描いていることによって、例えば“桃太郎”や“まゆ毛だけ変わっている男の子”など、年をまたいで継続して出ているキャラクターなどは、今年も描こうかなと、特に考えたりするようになりました。

―継続する登場人物は前年を見返して描かれているのでしょうか?

自分の中でも印象的だったものや、覚えているものをアイデア出しのときにふと思い出して入れています。実際にイラストを描く際には見返しながら、違わないように描いています。SNSのコメントや展示でいただく声などから、このシリーズは入れたいなと入れているものもありますね。たまにすごくシンプルなものを入れたりも、毎年だいたいしてます(笑)

―5年前のインタビューの時もおっしゃっていましたが、思いついたアイデアをスマホのメモに入れているのは変わらずですか?

そうですね、変わらずスマホのメモアプリに入れてますね。思いついたらメモして、「これはどうかな〜」という候補のものは50音順で分けてストックしてたり。なかなか浮かばないときは、そのストックを見返してアレンジしつつ使ったりもしています。

―まだまだストックがありそうですね!

終わりの言葉に偏りがあるので、例えばたまたま「め」で始まるものがアイデアに5個ぐらいあったとしても、1回も「め」を使うときが来ないこともあったり、アイデアとしてはどうかなぁ…というのもあったりするのでストックの数の割には、使えるものは少ないかも…(笑)。

―進め方の変化や、苦労されてることはありますか?

「これはいいな!」となる自分の中での合格ラインみたいなものがあって、それを超えるものがなかなか浮かばないときはけっこう時間がかかったりしています。一週間ほど浮かばないとか。毎年6月の締切に向けて年明けの1月から考えはじめるんですが、合間合間でずっと考え続けているので、7月〜12月までは考えないようにしています(笑)。メリハリもついてよいなと。

―カレンダーへの反響にも変化は感じますか?

「毎年使ってます」と言ってくれる方も年々増えてきている気がしますね。友人や家族にプレゼントとして渡してくれる方もよく聞くので、それもうれしいですね。あと職場で使ってくれる方もけっこう多いですね。職場の上司が「これはなんだろう?」と気になってくれることも多いとか。前からよく言われますが、「次の週のしりとりを当てようとするけどなかなか当たらない!」とか、「日曜の夜にめくる習慣になっていて、月曜の憂鬱さが少し軽減しています」というのもよくお聞きして生活に馴染んでいることも感じられてうれしく思いますね。展示の時に感想を書いてもらえるノートにも、カレンダーのことを書いてくれる方が多いなぁとも感じます。

制作について

ハムさえたべておけばきげんがいいせんぱい

―イラストを描くときに気をつけていることはありますか?

女の子(or男の子)が続きすぎないようにとか、大人数が続かないようにとかバランスをみるようにしています。あと例えばで言うと「ハムさえたべておけばきげんがいいせんぱい」というイラストでは、あんまりリアルな先輩すぎると失礼な気もして、個性的なキャラの方がぽいか…とか考えたりすることも(笑)。でも自分の中でイラストが“しっくりくるこない”の境目は、どのお仕事でもはっきりしている方かもしれないので悩みすぎるようなことはないですね。近年は表紙のイラストを特典ステッカーにも使っているので、表紙は特にシュールすぎるようなものにはしないようにしています。例えば「たらこ」とか…。

―先に全部まとめて 53週分のしりとりを作ってから描き起こしているんですよね?

そうですね。53個すべてのアイデアを考えてから、イラストに描き起こしています。イラストの構図・登場人物・だいたいのイメージをメモしておいて、それを参考に描き起こしています。たまにどういう絵にしたかったんだろうと思い出せないこともありますけど(笑)。

しりとりカレンダーのラフ案

しりとりカレンダーのラフ案

―実際イラストにする時は、どのようにして描いていますか?使う道具にこだわりがあったりするのでしょうか?

最近は下絵のラフを黒のサインペンで描いて、それをシャーペンでトレースしながら描き起こしています。普通は逆の方が多そうですけど。ペンで描いたラフの上に紙を重ねて、うっすら見える線をなぞるように。ラフで描きすぎない方がペン入れ時に生まれる線が生きている気がするので、ラフでは顔のパーツは描いてなかったり。最初の頃は太めの鉛筆でなぞってましたが、最近はシャーペンが多いですね。これはお仕事によって描く道具や方法を変えたりすることもあります。

―今までのイラストは紙で全部残されてるんですね。すごく貴重な資料です!!

そうですね、お仕事で描いたイラストはだいたい置いていて、しりとりのカレンダーのイラストも残しています。あと、描き直す時はあんまり元のイラストを消さずに残しています。考えの過程があった方が描きやすく、 対比できるのであえて新しく描いています。

―少し話は逸れますが、カレンダーを通じてなにか広がったことはありますか?

しりとりのカレンダーは、毎週その週のイラストをSNSでもアップしているんですが、お仕事を依頼いただくときに、そのSNSの画像をイラストイメージとして伝えてくださることがあったりして、そういうところも広がりのひとつかもしれません。 カレンダーのイラストはお仕事でありながら、かなりオリジナルテイストも高く描かせていただいているんですが、代表作のひとつみたいになっているのかなとも思います。

後半へ続く・・・
「発売中のグッズの制作秘話や、10 年続けてきて今後の展望などについて」

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