株式会社杉本カレンダー

独占インタビュー

―毎年少しずつ色味が変化していますが、その意図は何でしょう?イメージするものが毎年違うから?

―毎年少しずつ色味が変化していますが、その意図は何でしょう?イメージするものが毎年違うから?

しりとりのカレンダーの色味は、主線になる黒に色を4色入れていて、毎年少しずつ変えています。
自分で飽きてしまうところもあるのか、新しい色も見てみたくなるのか、なのでイラストのタッチも少しずつですが変わってきています。今回は台紙の色もグレーに変えてみました、リングの色もシルバーに。それに合わせて色味も淡めにして、個人的には少しオシャレになった印象です(笑)。
シンプルに見えて飾ってもらいやすくなったのではとも。また1年後作るときに変わるかもしれないですし、全く一緒でいくかもしれないですけど。その時の自分の好みも影響してそうです。

―我々も一緒に素材から選んで作っていくので、どういうものが出来上がってくるのかわからない、でも完成したものを見ると正しかったんだと思える、そういうところに喜びを感じます。

今回は台紙やリング、色味も変えて大きく変化があったので、出来上がりにドキドキしましたがイメージ通りに仕上がりよかったです。
下絵となるラフでいうと、今回ラフの線をそのまま使えたらというのがあったので、最初から一発描きのように本番の線のイメージで描きました。最近小さく描くのにハマっていて(笑)。今回のカレンダーのイラスト、元々ひとつ3cmくらいのサイズです。拡大して使うときに線がイビツになるので、パソコン上で整える作業はしているんですが、大きく描くよりも良いイビツさというか、計算できない線にもなるので、それが気に入っています。

―「しりとりのカレンダー」早いもので5年目になりました。この5年間で変えていること、逆に変えていないことはありますか?

変えてないことは、自由さですかね。自由さも年々増してきてると思うので、変わってはいるかもしれないんですけど(笑)。イラストのお仕事によくあるテーマのようなものもなく「しりとり」の縛りしかないので、出来るだけ自由に好きなものをというのは変わらず描いています。

―5年分でイラストの点数もかなり多いですもんね。53週×5年分で265個も!

日頃たくさんの点数のイラストを描く機会も多いんですけど、5年分になるとだいぶ増えましたね。アイデアを考えているときは「やっと53個できた!もう出ない…」とかなるんですけど、また半年たつとこうやって生まれてくるので、なかなかいいことかなと思っています。

―今までのイラストの中で一番のお気に入りはどれでしょう?
やはり表紙はお気に入りのものを持ってこられてるんですか?

―今までのイラストの中で一番のお気に入りはどれでしょう?やはり表紙はお気に入りのものを持ってこられてるんですか?

今までの…少しずつ忘れてきてますね…(笑)。
毎年「あ」から始まるようにしていて必然的にそれが表紙になるので、表紙のものは比較的無難なというか、イラストだけで見てもよさそうなものにしています。例えば「ちくわ」だけにしないとか(笑)。キャラクターを出したり表紙的なことも意識しています。
お気に入りは今回の2020年版の中で言うと、「かくれていたてんぐと かくれていなかったてんぐ」とか。どういう状況…?っていうかなりシュールなやつです(笑)。天狗は実在しないのでこの状況になることもなく、隠れている方が良いのか悪いのか…、このわけわからなさが結構好きです。
天狗とか鬼とかカッパとか、実在しないものをよく描いたりもします。みんなが知っているけれど実在していないからリアル過ぎず、何かさせたときにおもしろかったりオールマイティに働いてくれるイメージ、でもメジャー過ぎない感じが好きです。 あと、ひとつのカレンダーの中で同じシチュエーションのものを描くこともあります。今回でいうと「のびすぎたうどんをくれる人」と「つぶれたコッペパンをくれる人」って同じ“くれる人”が出てきます。
しりとりのアイデアを考えているときに、採用しようと思っている言葉の中で“何かあげた人いたな”というのが頭にあって、今考えている言葉なら“また何かあげるようにできるな”というときには、同じキャラクターにして“あ、また出てきた”みたいな感じにすることがあります。イラストの数が多くなると世界観もできてくるので、同じキャラクターを出すこともよくします。

―年をまたいで話がつながっているものもありましたよね。毎年買ってくださっている方にはそこで発見もあって、そういう楽しみ方もしてもらえますよね。

どこまで発見してもらえているかもありますけど…(笑)。 
でもまさに今回の展示で一気に見てもらえて、そのつながりを発見してもらえたりするのもこの展示ならではな感じがしますね。

―実際にカレンダーを使っていただいている方の声を聴いてどう思われますか?

―実際にカレンダーを使っていただいている方の声を聴いてどう思われますか?

“カレンダー使ってます”と言ってくれる方もけっこう多くて、嬉しいなというのとともに、このシュールな内容でも受け入れてくれるんだなという確認や安心感もあります(笑)。
買ったときには全部見ずに、その週がきてからめくってくれてる人も多く、その中には言葉を当てようとしてくれてる人もいて、“全然当たらないです”ってよく言われます(笑)。「の」で「のびすぎたうどんをくれるひと」なんか絶対出てこないですもんね。そういうそれぞれの楽しみ方をしてくれているのがまた嬉しいですね。
職場で置いてくれている人も多くて、カレンダーを見たまわりの職場の人が気になって、そこから会話が生まれたとか、コミュニケーションの一つになっていると聞くとそれもまた嬉しいです。イラストが「すのこ」の週に、不思議そうに見られたと聞いたこともあります(笑)。カレンダーに限らずですが、イラストに対して感想をもらえるのが一番嬉しいときでもありますね。

―単純に絵柄を見て楽しめるカレンダーは数多くありますが、みんなで見て、コミュニケーションのきっかけになるようなものはなかなかないですよね。

楽しく考えて自由に作っていることが、見る人も自由に捉えて楽しんでくれているのかもしれないですね。

―今後カレンダーとして、こんなことをしてみたいなというのはありますか?

この「しりとりのカレンダー」が少しずつ定着してきた感じがあるので、“毎年買っています”と言ってもらえることも嬉しく、長く続けていきたいなという気持ちです。53個の生みの苦しみはありますけど(笑)。毎週めくりながら、一人でも家族でも見てもらえるものとしても、よい形かなと思います。見る側も作る側も飽きがこないように、自由度をキープしつつ続けていければですね。5冊も継続して出させてもらえていることがありがたく、本当嬉しいことです。

1時間以上にも及ぶ今回のロングインタビューで、ニシワキさんの頭の中を覗かせてもらったような気持ちになりました。
ひとつひとつ丁寧に、こだわりと愛情とユーモアを持って作品やキャラクターを生み出し続けるニシワキさん。ますますファンになりました。

ニシワキ タダシ

イラストレーター。なんともいえないイラストやモチーフで、書籍や広告、グッズなど幅広く活動中。著書に『かんさい絵ことば辞典』(パイ インターナショナル)、『かきくけおかきちゃん』(大福書林)などがある。
http://www.smoca-n.com(twitter & instagramアカウント「@nishiwaki_t」)

インタビュー・文:竹村明希子
撮影:古結裕久

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